商社とはコンビニと同じです。
なぜなら、少し高くても、多くの人はコンビニでも買い物しますよね。便利だからです。商社を使うお客も、これと全く理屈です。
地元のスーパーで、賞味期限の迫った「半額弁当」が最安でしょう。
どうして、コンビニを利用するのでしょうか?
コンビニの語源は、Convenience Storeです。直訳すると便利店です。
忙しいビジネスマンが、弁当が半額になるまで、地元のスーパーで、待ちますでしょうか?
しかも、どの弁当が半額弁当になるかも分からないのです。
あなたの好きな「うな重」が、すぐに食べれるなら、目の前の便利なコンビニ(商社)を選ぶのです。
■こんな方にオススメ
・商社への就職を考えている
・商社は手数料だけ高いイメージがある
・B to B 営業手法を知りたい
僕は、某上場企業の商社マンとして13年営業をやってきました。自分の仕事に誇りを持ってます。商社業というシンプルなビジネスモデルに惚れ込んでもいます。
何を考えて、営業しているのか、裏も表も全て公開します。コンビニに存在意義があるように、商社業にも、れっきとした存在意義があるのです。順に解説していきますね。
目次
商社は手数料を取る悪どい商売なのか?
過去の動画「商社ビジネスモデルが、最強な理由を、現役商社マンが解説するよ。商社不要論とは言わせない」に
下記のようなコメントをいただきました。
ECをもっと発展させて早く商社ビジネスぶっ壊したいわ。無駄に毎回払う手数料バカにならないし、こんな中間ビジネスでメーカーより良い給料なのはおかしい。機器についての理解もないし、発注のスピード感も商社が間に入ることで遅れる。日本メーカーの癌です。
「商社不要論」を言われる方は、一定数います。このような、ご意見も真摯に受け止める必要があります。全てのビジネスに「商社が必要か?」と問われればNOです。
おそらく質問者さんの会社では、商社が必要ないビジネスなのでしょうか。それとも、過去、良い商社マンと会ってこなかったのか、だと推測します。商社の給料まで触れられているので、少し個人的な負の感情も見え隠れしますね。
手数料ビジネスなだけ…
商社のビジネスモデルは、いたって単純です。
メーカーから商品を仕入れ、お客さんに販売する。その差額が利益(手数料)です。
転売屋とか、手数料ハンターとか言う人もいますが、実は、世のビジネスとは、ほとんどが、↑この公式で説明がつきます。手数料ビジネスです。コンビニも、食品メーカーなどから商品を買って、店頭で売ってますよね。
なので、商社業が「悪どい」商売でないことだけは、まずご理解頂きたいです。
なぜコンビニは繁盛するのか?
冒頭で「商社はコンビニと同じ」と言いました。
では、なぜ、お客さんは、スーパーより高い弁当をコンビニで買うのでしょうか?
「欲しいものが、そこそこの価格で目の前にあれば買う」
これに尽きます。非常にシンプルですよね。
お昼休憩が、1時間しかなくて、安いスーパーが3km先にあったとしたら、皆んな、多少高くても、目の前のコンビニに入りますよね。
それは、あなたが、弁当を食べたいと思った時に、目の前にコンビニが存在して、弁当を用意してくれているからです。
そして、ついでにATMでお金下ろしたり、電気代払ったり、宅急便を頼んだりと、ありとあらゆるサービスを、その場で、提供してくれますよね。便利だからこそ、コンビニに、立ち寄ってしまうのです。
商社業も、この便利さを売りにしているに過ぎないのです。
逆に、商社を一瞬でも不便に感じてしまうと、上記のコメントのような、邪魔な存在、無駄な工数として見られてしまうのです。
便利なコンビニであり続けるとは?
では、僕が、商社営業で心がけていることは何か?
お客にとっても、メーカーにとっても便利な存在になる事です。
これも、またシンプルでしょう。商社とは、ビジネスモデルも、営業マンのあるべき姿も、非常にシンプルなのです。
メーカーとの付き合い方
コンビニ店主 = 商社マンと仮定した場合、コンビニに商品が並んでないと、誰もお店に来てくれませんよね。また、楽天やアマゾンで買える商品だけ並べてても買ってくれません。
店主が、まず考えることは、他店との差別化です。特殊な設備、ニッチなもの、売れそうなもの、特色のあるもの、最新のものを、たくさん店頭に並べておかないと、他のコンビニ(商社)に、お客が流れてしまうのです。
僕は、取引のあるメーカー(仕入先)に、いつも
と伝えています。そして、新製品が出れば、そのメーカーのカタログ・パンフレット持って、実際に、お客さんをまわります。
商材は常に、リフレッシュさせて、毎月、何かしら新しいメーカー製品を、色んなお客さんに伝えているのです。
ここで大切なのは、
いつどこに訪問して、どんな反応があったのかを、細かくメーカーに、フィードバックする事です。ここを、絶対に怠ってはいけません。
メーカーとしては、新製品が、マーケットでどのような反応をするのかを物凄い気にします。
だから、僕のような、お客に近い存在からの「生の声」を欲しがってます。
本音言いますけど、極論、売れなくても良いんです。メーカーから「室長さん、うちの商品を本当にPRしてくれてる」と、思っていただけるだけでも、実は良いのです。
メーカーは「前回の商品はダメでしたが、また次の新しい商品が出ました」と、僕を頼ってくれるのです。そうして、売上がたつと、感謝されますし、そこで信頼関係も生まれます。
よーく考えてくださいね。僕が扱う商品は、カップラーメンとか、シャーペンではありません。それらは、店頭に並べてたら勝手に売れますよね。
でも、ニッチな、特殊な設備なんて、簡単に売れない、だからこそ、メーカーは、商社に頼っている、という側面があるのです。
お客さんとの付き合い方
お客さんは、とにかく、忙しく時間がありません。会いたくても、なかなか会ってもらえません。「そっちの近くに行くので、会ってくれませんか?」とか言っても、絶対に会ってくれません。
訪問するには「会う理由」が必要なのです。その口実を考えるところから、僕の営業は始まるのです。そこで、利用できるのが「メーカーの新製品」なのです。
さっきのメーカーは、1社じゃないんです。僕は、おそらく100社以上の製品を扱ってます。そうすると、どこかで、何かしら新製品は出ますし、横のつながりで、新規仕入先も増えます。
お客さんに「金型製品で、最新技術を使った○○を紹介したいです」と言うと、自社と、関連がありそうな商品であれば、お客さんは会ってくれるのです。
僕が心がけているのは「常に、何か新しい情報を持ってくる奴」と思われることです。そこで、約束通り、メーカーの商品を紹介するのですが、目的は、その新製品を売ることじゃないんです。表向きの理由であり、本音は違います。
なぜなら、そのお客の今欲しいモノが、超偶然にも、僕が新製品として持ってくることは、あり得ないのです。確率的にはゼロに近いんです。
打合せの中で、必ず聞くのが
すると、こんな設備が欲しい、これで困っていると、ボロボロと、お客さんの本音が出るのです。その情報を持って帰って、取引のある100社近いメーカーから該当しそうなところに「〇〇のお客が、こんなもの欲しがっている」と連絡を入れるのです。
メーカーとしては、そんな連絡もらえると嬉しいですよね。
そして、お客さんに「昨日言ってたのは、これでしょうか?」と、フィードバックするのです。この繰り返しをしてると、メーカーとお客のマッチングが出来るのです。
慣れてくると、お客の同業者周りをします。A社、B社、C社が、バイク製造会社だとします。A社から「こんなモノが欲しい」という情報を得れれば、B社とC社も、同じ需要がある可能性が高いんですよね。業界用語で「横展開する」と言います。
ね、やってることは、単純でしょ。
優秀な商社マンとは?
多くの優れたメーカーと、お客さんとの関係を持っている事です。マッチングするにも、たくさんの商品と、たくさんのお客さんがいてこそです。
そして、どのメーカーが良くて、どのお客さんが良いかを見極める目利きも、僕たち商社マンの付加価値なのです。
メーカーの中には、競争力のない商品しか揃ってないところもある。そんな商品をいくら、販売しようとしても、時間を消耗するだけです。
お客だって、予算もないのに、あれこれお願い事だけしてくる人もいます。クレーマー気質な会社とも、なるべく仕事をしないようにしています。手間が掛かって仕方ないからです。
目利きができれば、お客から「室長さんが、そこまで言うなら良い商品なんでしょ」って言ってくれたりします。
面白くなければならない
そして、ビジネスライクな話だけでなく、色んな面白い話も必要なのです。
知識を並べて自慢するような教養ではなく、実体験を入れた面白い話です。お客から「室長の話は面白い」と思ってもらえると、次に会いやすいのです。
とあるお客とは、会えば、ひたすら米国株の動向を話したり、別の人とは、節税方法(NISA、イデコ、ふるさと納税)とか、子育て論(子供を東大に入れる方法)とか、情報発信(あなたの身近にYouTuberいます?)など、僕は得意ですね。
そういう「面白い引き出しもいくつも持つこと」も重要です。
だって、会社も違う、赤の他人のオッサン同士が、仕事だけの話では、打ち解けられないんですよ。どこまでいっても友達じゃないのですが、それでも関係性は作れるはずです。
サラリーマンの本音と建前
話を戻しますね。
商社が扱う商品は、中間マージン分、少し高いです。そして、どれもが、B to B (会社 対 会社)なのです。
これが、自分の財布から出て行くお金だったら、コンビニ(商社)でなく、最安スーパーに行く人もいるでしょう。B to C(会社 対 個人)とは、考え方が全く違うのです。
会社のお金となれば、自分のお金でないため、コンビニ(商社)のような、楽な方、安全な方をサラリーマンは選ぶのです。
わざわざ、安くて、賞味期限が切れそうな、食べるとお腹を壊すかもしれないチャレンジは、皆んな、やらないのです。そして、建前では「1円でも安いところから買う。原価低減が必要」と、言ってますが、本音は違うんです。
サラリーマンは、失敗を恐れます。冒険したくないのです。失敗して、社内での自分の評価を下げたくないんです。だから「失敗せずに、それなりの利益を会社に残せればいい」という安全路線を選んでしまうのです。
僕だってサラリーマンですから、ここは同類でして、社内では
と目標設定しますが、全部、ポジショントークの建前です。極論、会社が儲けようが、儲けなかろうが、僕には関係ないのです。このような思想は、ダメリーマンと思われるかもしれませんが、皆んな、口には出さないだけで、これが真理です。
会社からの営業命令を、真に受けて、ガムシャラに頑張っている人がいれば、それは、何も知らないうぶな新卒であるか、ただの、お馬鹿さんでしょう。
お客も、メーカーも、自分も同じ、皆んなサラリーマンですから「それなりの落とし所」が、どこかにあるのです。建前ばっかり並べつつも、お互いに、その落とし所を探し当ててくるのが仕事だったりもするのです。
注意:相手が経営者だと話が違ってきますので、使い分けが必要です。
まとめ
・世の全てのビジネスは手数料が存在する。
・欲しいものが、そこそこの価格で、目の前にあれば買う。
・商社とは、究極的には便利店である。
・会社のお金と、自分の財布は、根本的に質が違う。
これらのポイントは、商社業でなくても共通しているはずです。あなたの関わっている業種に置き換えて、うまく応用していただければと思います。
See you tomorrow.