世の中に「ぼったくり」は、存在しないです。
なぜなら、無理矢理、買わされたわけではなく、自分の意志で、納得して買ったのであれば、それが「適正価格」だからです。
コロナ騒動で、マスクが、一時的にに値上がりしましたが、あれは「ぼったくり価格」ではありません。需給バランスが崩れただけなのです。その時々では「適正価格」だったはずです。
日本政府は、マスクや消毒液に、転売規制をかけましたが、これは資本主義を否定するのと同じなのです。なぜなら、全てのビジネスは、転売行為なのです。
あなたの会社も、何かを仕入れて、何かを売っていますよね?
どこの会社も、仕入れたものを、加工したり、他の部品と組み合わせたり、無形サービスを付加して、誰かに、売っている(転売している)のです。
商社マンからみた「商売のポイント」を、解説していきたいと思います。
■こんな方にオススメ
・「転売」という言葉がなぜか嫌い
・「利益」という言葉もなぜか嫌い
・「ぼったくり」は許せない
まず「ぼったくり」の意味を確認しておきますね。
ぼったくりとは、法外な料金を取ること。力ずくで奪い取ること。
僕のいう、ぼったくりとは「法外な料金を取ること」を指します。決して、力ずくで、買わされたものでもなく、騙されたものでもないとします。
商品の中身を理解した上で、納得して買った場合、としますね。
壊れたものや、ニセモノを、わざと販売したり、1人5,000円と言っておきながら、最後に、高額請求するホストクラブなどは、ぼったくりです。それらは、違法行為です。
目次
マスクの転売は悪なのか?
先日、下記のようにツイートしました。
厚労大臣が「消毒液の転売禁止」と発表。覚醒剤だったら別ですけど、ただの消毒液ですからね。
転売を規制するのは、資本主義を否定するのと同じです。全ての商売においての基本は「安く仕入れて、高く売る」という転売行為ですからね。
仕入れた後、付加価値を、どれぐらい加えるかだけの違いです。 pic.twitter.com/4VCYv0z34Z
— 室長@海外商社&YouTuber (@SHITSUCHO2019) May 22, 2020
そうすると、下記のような、コメントをいただきまして、やり取りが続きました。ありがとうございます。
以上、皆さんは、どう感じられましたでしょうか?
商社ビジネスとは、転売行為をいいますし、僕としては、ここは譲れない議論でしたw
転売自体は悪くないのです。市場価格は、需要と供給に委ねるべきです。欲しい人が増えたので、価格高騰するのは自然な現象です。
議論の論点ですが、転売屋が消毒液を買い占めたから、価格が高騰したのでなく、世界中でコロナが拡がったから、爆発的に需要が増え、供給が追いつかなくなり高騰したのです。
見えない転売屋を悪者にするのは、間違っています。解決策としては、政府は、転売を規制するのでなく、供給量を増やして、市場価格を抑えるべきなのです。
以上が、僕の一貫した主張です。
資本主義とは「歪み」を探すゲーム
資本主義とは、制度や市場の歪みを、誰よりも早く見つけ出すゲームなんです。
それはズルでもないんです。そういうゲームなんです。
この「歪みを狙う」という行為が、地球全体で、自然発生しているがために、その結果、社会全体が最適化していくんです。自主補正機能みたいなもんです。
いわゆる、これが、資本主義のマーケットメカニズム(市場原理)と呼ばれる、素晴らしい機能なんです。
例え話で考えますね。
僕が、タイの田舎で、世にも珍しいフルーツを発見したとします。
とても甘いんです。でも、ここの田舎の人は、そのフルーツを食べてませんでした。よって、僕は、タダ同然で、大量に入手できたとします。
「甘くて美味しい」
「タイで、タダ同然で手に入る」
「まだ日本で知られてない」
↑これら3つの条件が、社会の歪みなんです。
本来あるべき姿でないのです。まだ、誰もこの歪みに気付いていないのを、狙ったのです。僕は、自分の利益だけを考えて、タイから日本に輸出して、結果大儲けします。
この「大儲け」は、社会の歪みを、いち早く発見したからこそ、生まれた利益です。歪みを利用したわけです。悪いことはしてませんよね。日本人も、甘いフルーツが食べれて大満足です。
そして、他の人や、他の企業も、真似して、このフルーツを輸出することで、だんだん儲けが減ってきます。価格もバナナぐらいに下がるでしょう。
そうなった時点で、すでに、社会の歪みでは無くなっています。コモディティ化(一般化)されたのです。よって、ビジネスの旨味はありません。
しかし、この一連の結果として、バナナぐらいの値段で、この甘いフルーツが日本で食べれるようになったのですから、皆んなハッピーですよね。
不思議なのが、僕は自分の利益だけを考えて行動したにも関わらず、社会全体が良くなったのです。これが、絶え間なく繰り返されているのが、資本主義社会です。なので、社会主義より、豊かになるんですよ。
「個人や企業が自分の利益を求めると、自然と社会全体が効率化する」とは、資本主義の父アダムスミスの名言です。誰かが儲けようとしたからこそ、様々なフルーツが安く手ごろに、日本で味わえるのです。
相手の足もとを見るのが基本
ここから、実ビジネスの話をしますね。僕は、15年近く商社に勤めています。商社のビジネスモデルは「安く買って、高く売る」なのです。
いつも悩むのが、利益をいくらのせるべきか?販売価格をどうするのか?です。
基本的に、競合がいなければ、それなりにのせます。利益率を高く設定するのです。相手の足もとを見ているのです。
では、この考え方は、卑怯なのでしょうか?
発注があれば、それが、お客さんの意思表示であり、その場所、その時の「適正価格」なのです。
「足元をみている」といえば、そうなんですけど、相手の足元をみない商売って、何かありますか?
競合がいないというのは、ラッキーではなくて、それなりにリスクをとって参入したということです。競合もリスクがあって、そのビジネスに手をつけてないのです。
そんな環境下で、仕事をとったのは、供給者である商社なので、評価されるべき(=利益享受すべき)なのです。
競合がいないところに、参入するというのは、失敗する可能性も、その分、高くなります。もし、失敗すると商社は赤字となりますよね。
リスクとリターンは、つねに比例関係にあるのです。
もし、お客さんが、「足元を見るな。もっと安くしろ」とクレームしてきても、だったら、他社から買うか、自分で輸入して手配すればいいのでは?と言い返せばいいのです。
買う人の自由が担保されているのであれば、売る側は、いくらでも利益をのせてもいいのです。
買い手に原価がバレているのか?
販売価格を設定するときの注意点があります。
売る側(商社)は、買い手(お客)が、原価計算できているのか?を意識しないといけません。ここは、むちゃくちゃ大切です。
例えば、
・四葉のクローバー
・ミャンマー洞窟で採れたきれいな石
これらが、1万円で売られていたら、おそらく、四つ葉のクローバーに対しては、お客さんは「それ、利益のせすぎ。適正価格じゃない」と突っ込んでくるでしょう。
なぜなら、四つ葉のクローバーの原価を知っているからです。その辺の公園に行って、誰もが頑張れば、見つけられる四葉のクローバーに、価値はありません。だから1万円では売れないのです。
しかし「ミャンマーの洞窟で採れたきれいな石」って、よく分からないでしょう。すぐに見つかるのか、なかなか見つからないものなのか。希少性があるのかないのかも。
モノが高いか安いかは、お客さん自身で、原価計算しているのです。
それを作るのに、人件費、材料費、加工賃がいくらかかるのだろうと、想像するのです。
原価計算ができる商品 → 利益率が低い
原価計算ができない商品 → 利益率が高い
よって、商品設計する段階で、オリジナリティ(独自性)が大切だとか、付加価値が大切だとか、言われるのは、そのためです。独自性があれば、相手に、原価計算されにくく、利益率が高く設定できるのです。
仮に、僕が、商社の立場で、四つ葉のクローバー(買い手が原価を知ってる)を、1万円で販売するように、社内指示を受けた場合、どうするだろうか?
答えは簡単。原価計算しにくい付加価値をつけるのです。
例えば、クローバーに金箔をつける、結婚式用として指輪とセット販売する、QRコードをつけて、スマホで読み込むと、送り主の録音が流れる、などですかね。
だって、指輪とセットとか、QRコードとかって、原価計算しにくいでしょう。そういうのを付け加えて、原価計算でなく、独自性の驚きや、ある種、感情に訴えていく(特別感を演出)のです。
マスク転売業者の失敗
マスク転売業者は「コロナ感染拡大の恐怖」という、マスクの需要と、供給が崩れたタイミングを狙って、高値で転売しようとしていました。
突如発生した、マーケットの「歪み」を狙っており、これ自体は、何も問題ないのです(政府は規制してましたが)
しかし、こんなビジネス、僕は、絶対に手を出しません。
先ほど述べた「相手の足元をみて、販売価格を設定する」というのは正しいですし、それによって、一時的には儲けが出るかもしれませんが、事業としての継続性が難しいのです。
なぜなら、買う側は、マスク1個の価格を知っている(原価を知っている)ので、気持ちよく買い物してないのです。
他に手がないので、仕方無しに、転売業者から高値で買っているからです。このマスク特需の時期が過ぎれば、お客さんは、その業者から離れていくでしょう。
問題は、暴利をのせて販売すると、お客さんが離れていき、商売の継続性が失われるのです。
目先の利益だけを追って、高い利益設定すると、適正価格のライバルが現れた時に、一瞬で、その商売自体が無くなるのです。商売を、長い目で見たときのトータル利益が失われるのです。
そして、もっと痛いのが「室長さんは、今まで、こんな高値で売ってたんだね」って、信用も失われるのです。これが怖いので、僕の会社(商社)は、あまり利益をのせすぎないように気をつけるのです。
極論すると、利益設定とは、モラルやら、原価計算やら、お客さんの為じゃなく、実は、自分が生き残っていくため(商売の継続性)なのです。
これらが、商売する上での原理原則なのです。
まとめ
- 買主に自由があれば、ぼったくりは無い
- 資本主義は歪みを早く発見するゲーム
- 売主は相手の足元を見るのが基本
- 買主が原価を知っている場合は注意
- 商売の継続性をみた時に一次的な暴利は不利
See you tomorrow.