海外商社マンって、どんな仕事してますか?という質問を頂きました。
僕の主な仕事は「自動車工場の自動化・効率化のお手伝い」です。
これだと分かりにくいので、詳しく説明してきますね。
■こんな方がオススメ
・商社に興味がある学生さん
・海外ビジネスに興味がある
・室長の仕事が気になる(ありがとう)
自分でやってることは、業界内では当たり前のことなのですが、意外と別業界や、学生さんからは、新鮮に映ると思います。
目次
モノを「右から左」の時代じゃない
商社ですので、基本は、モノを買って売るのが仕事です。
しかし、従来の、モノを右から左に流して儲かるという時代ではなく、そこに、商社が、何かしら価値を付加しないとなりません。
「モノを右から左」の旧ビジネスモデルは、単純で且つ簡単なのです。情報や物流が発展したいまでは、実は誰でも出来てしまいます。そうすると、他社も参入してきて、結果、価格競争に陥ってしまい、旨味がないのです。
よって、独自性、弊社でしかできない付加価値を出していかないと、生き残っていけないのです。お客さんから選んでもらえないのです。
では、その付加価値とは、一体どんなものでしょう?
商社の付加価値とは?
付加価値とは、ある設備に、機能を追加して高機能化するだけではありません。
ぶっちゃけ、お客様から「価値がある」と思ってもらえれば、何でも「価値」なのです。
実例を2つあげますね。
①現地化(ローカライズ)
海外で商社業していると避けられないキーワードです。ローカライズとも呼びます。
要は「現地でやれることは、現地でやって安くする」なのです。
海外自動車工場(自動車を作る完成車両メーカー)の現場では、数々の日本製設備を入れます。車のフレームを溶接するロボット、品質を確認する超音波検査機、フロントガラスを接着させるための塗布機、、などなど。
後進国である、東南アジアでは、地場のタイメーカーでは、これらを作れません。そうすると、輸入に頼らざる得ません。しかし、輸入すると、関税や輸送料などが、余分にかかってしまい、日本より購入金額(コスト)が上がってしまいます。
日本で、輸入食品が高いのと、同じロジックですね。
そこで、誰もが考えるのは「このロボットを、一部分でもタイで手配できないか?」という、現地化なのです。
ロボット本体は、複雑なので、輸入に頼らざる得ないのですが、そのロボットを置く「置き台」だけとか。
ロボットは置いて終わりでなくて、設定してあげないといけない。従来は、日本人技術者を、日本から呼んでいたが、タイにいるタイ人技術者でできないか?など。
その提案を、僕(商社)が行うのです。
お客さん目線でいくと、普通は、商社が入ると、設備が高くなるのですが、その商社が、設備の一部、技術者の現地化を提案することで、商社のマージン入れても、トータル金額が安くなったりするのです。
初期費用だけではありません。現地化することで、購入後の現地のメンテナンス性も上がるのです。
「ロボットの設定を少し変えたい」と思ったときに、タイ人技術者がタイにいれば、安価に対応できたりします。置き台の高さを少し低くしたい、となっても同じですよね。
②お客様の手伝い
僕が相手にしている部署は、自動車工場「生産技術」の方です。
彼らの使命は「工場の稼働率(時間当たりの生産数)をあげつつ、品質の高い車を安定供給する」です。
その手伝いを、僕(商社)がするのです。
日本の工場は別として、海外工場の生産技術といっても、そんなに人数がいません。技術力も情報も経験値も、日本と比べると低いです。そこを補填するのです。
例えば、今までマニュアル(作業者が手作業)していたところを、ロボットを導入して自動化しようと言うのは簡単ですが、それを「生産技術」の担当が、1人で行うのは至難の技なのです。
■生産技術の考え
・ロボットは作業者と違い24時間働ける、品質も安定する
・しかし、導入コストが高い。設置後の融通がきかない。
・工場はフル稼働中、いつ設置できる?スケジュールは?
・費用対効果はどれだけ出るのか?
・どこのメーカーで、どの仕様のロボットが何台必要なのか?
・予算は足りるのか?誰が設置工事するのか?
など、検討することが多いのです。生産技術という立場ですので、何もしないわけにはいかない。
彼らもサラリーマンですから、それら検討結果を、自分の上司に報告して、承認をもらわないといけません。僕は、その生産技術が、社内報告できるような情報を提供します。
■室長の提案(例)
タイ人作業者は、年間150万円ぐらいのコストがかかります。
昼と夜の2交代制だと、150万円x2名=300万円/年です。
その工程にロボットを導入すると、作業者が2名削除できます。
ロボットは、3,000万円の初期導入費が発生します。
10年以上使うことができれば、トータルコストが安くなります。
タイの人件費は、年3%で上昇傾向にあり、また品質不良も稀にあります。
しかし、ロボットはランニングコストは一定で、品質も安定します。
だから、今、購入検討しましょう。
という情報を、僕が計算してプレゼン資料にして渡します。
もし、この案が通れば、生産技術としては「室長さんに手伝ってもらったし」と、情も借りもあるので、発注してくれるのです。
ロボットだけではなく、工場の設置、設定、あとメンテナンス業務、予備品供給まで、受注できれば、商社マンとしては百点満点ですね。
理系知識も英語力もいる
僕は水産学部出身ですのでビックリされるのですが、お客さんのほとんどが、工学部出身です。
八百屋で大根売るのと違って、しっかり自分が、その工場設備を理解して、技術仕様書や、カタログを見て、それなりのことを説明しないといけません。
商社ですので、自社製品だけを扱っているわけではなく、B社とA社のロボット、どっちが、良いの?という質問にも答えられないといけない。
加えると、それなりの英語力も必要です。生産技術というお客さんは、日本人でないケースもあります。英語の仕様書を読み込んで、それを提案して行くのです。大変な作業です。
輸出入業務もあるので、そっちの知識もいりますね。
どうでしょう?これが「付加価値」なのです。
僕の今やっている仕事が、専門的であればあるほど、難しければ難しいほど、参入障壁が高い、他社が簡単に真似できないのです。そこを見定めて営業活動をしています。
心の中では「もし、僕がいなかったら、ロボット案件まとめれないでしょ?」と思いながら、それは、お客さんも分かって、頼りにしてくれている部分もあるのです。
今回はお客さん目線で書きましたが、次回は、メーカー目線で書いてみますね。商社にとって、メーカーさんは、お客さんと同じか、それ以上、大切な存在です。
See you tomorrow.