商社のビジネスモデルは「売りたい人と、買いたい人の間に入ること」なのですが、これは未来永劫なくならないと思う。そして最強だとも思います。
上場企業の商社マンとして12年間働く僕が、その理由を徹底解説します。
■こんな方にオススメ
・商社に興味がある
・商社を胡散臭く思っている
・ネットの時代には中間業者はいらないと思っている
目次
ビジネスモデルの特徴
堀江貴文さんが、提唱する儲かるビジネスの4ヶ条とは下記です。
- 利益率の高い商売
- 在庫を持たない商売
- 定期的に一定額の収入がある商売
- 小資本で始められる商売
これらを全てクリアするとなると、最終的にはインターネットビジネスだけが残ったので、彼は、それなりの結果をインターネットビジネスで残したのだと思います。
商社のビジネスを、この条件に、当てはめてみると、、
- 利益率の高い商売 NO
- 在庫を持たない商売 YES
- 定期的に一定額の収入が入ってくる商売 場合によってはYES
- 小資本で始められる商売 NO
1)利益率は高くない
商社は、中間業者なので、利益率は低いです。メルカリや、ヤフオクも、厳密にいけば、中間業者ですよね。売りたい人と買いたい人の間に入ってます。
これが「手数料が30%です」と言われると、高く感じるので、買いたい人が寄ってこない、結果、ビジネスととして成立しません。
総じて、利益率は低くなりがちです。
2)在庫を持たない(=固定費が少ない)
商社の最大の強みは「在庫を持たない」です。これが何を意味するのかというと、急に不景気になっても、在庫リスク(ものを作っても売れなくダブつく)がないので、赤字にならないのです。
そして、自社ビルを保有していると、固定費として、人件費ぐらいなのです。
これが、飲食業、家電量販店、製造メーカーだと、店舗や工場、倉庫などの固定費が、景気や売上の上下に関わらず、発生してしまいます。
商社には、在庫がない分、在庫リスクもなければ、固定費も限りなく低いのです。
3)場合によっては定期収入も
業界用語で「流れもの」と呼びますが、材料や原料を扱うと、定期収入になります。
例えば「化学メーカーに、素材の原料を納める」など。化学メーカーは、自社工場で、化学製品を作っていますので、定期的に原料を購入しないといけない。商社としては、勝手に流れていく商材になるため、安定収入になるのです。
しかし、納期管理や、お客さん側の在庫管理など、安定的に供給するために、絶対にミスは許されないのです。濡れ手に粟のような、楽な商売でもない。万が一、化学メーカーへの原料供給が止まると、工場稼働が止まるなど、大問題になります。
よって、場合によっては、安定供給のために、商社が在庫したりもします。
4)大資本が必要
それなりの資本がないと、商社ビジネスはできません。なぜなら、各社から、先に、商品を買い上げる(仕入れる)からです。キャッシュフローとしては、必ず、支出が先で、収入があとです。
「大資本が必要だからこそ、参入障壁も高い」とも考えられるので、競合先が限定されるのは良い点です。インターネットの転売(いわゆるセドリ)で、すぐに価格競争(値引き競争)になるのは、皆んなが、個人でも、小資本で簡単に始めることができるからです。
何十億の設備を仕入れて売る、などは、さすがに個人や小規模の会社にはできないのです。
商社がどうして世に必要なのか?
どうして商社が、世の中に必要とされているのか、具体例をあげて説明しますね。
仮に、
売りたい人:扇風機を作る和歌山の中小メーカー
買いたい人:南アフリカの大手家電量販店
という、2社があったとします。この2社の間に、商社が入るとしますね。
専門用語も出てきますが、しっかりついてきてくださいね。
商流
このように商社が間に入ることを「商社を噛ます」と言ったりします。
商流とは、漢字の通り、商売の流れです。メーカーは商社に売る、商社は量販店に売る、その「商売の流れ」を指します。ここ実は、非常に重要なのです。
自分たちは誰に販売していて(お客は誰?)、仕入先はどこで、そして、エンドユーザーは誰なのかを常に意識しないとなりません。
仕入先 | お客 | |
メーカー | – | 商社 |
商社 | メーカー | 量販店 |
量販店 | 商社 | 一般客 |
メーカーの客は「商社」
商社の仕入先は「メーカー」客は「量販店」
量販店の仕入先は「商社」客は「一般客」
この場合、一般客がエンドユーザーの南アフリカ人となります。
管理費
商社は、商流に入りますので、そこで、手数料をとります。
業界用語では「商社の管理費」と呼ばれます。仕事の中身にもよりますが、数%〜20%ぐらいでしょうか。
実は、メーカーも、量販店も、ホンネは、直接取引き(商社抜き)です。それは両社とも分かっています。
なぜなら、メーカーからすると「商社が入らないと、その手数料分だけ、販売価格を上げられる」と考えますし、量販店からすると「1円でもコストを抑えたい」と考えます。
では、なぜ商社が入るのでしょうか?
両社の問題を解決している
メーカーも、量販店も、直接取引するにあたっては、いくつもの業務(ハードル)が存在します。そのハードルを、両社が正確に理解して、1つ1つ、自社で対応できればいいのですが、どうしても、手間が掛かってしまいます。
手間だけならいいですが、物理的にも経験値的にも、出来なかったりします。
本業に集中したいのは皆んな同じです。結果、それらの業務を、商社に任せてしまうのです。
どんな、問題があるかというと、、
■メーカー
・自社に海外営業する人材がいない
・海外取引も少ないし人材を雇うまではいかない
・日本円で商売したい(海外送金って大変)
■量販店
・日本の中小企業、ちゃんと物が届くのか?
・お金を払って不良品が届いたら?
・米ドルでのやり取りは可能?
両社の、これら問題が解決されないと、買いたい人と、売りたい人が世の中にいるのにも関わらず、その間に、誰かが仲介に入らないと、成り立たないのです。
商社がいないと、このメーカーと量販店は、永遠にビジネス出来ないことになります。
メーカーも、量販店も、売り上げを伸ばして、利益をあげたいというのは、万国共通です。
その目的を達成するために「商社に、多少、管理費を払ってでも、自社の利益を出したい」と思ってもらえれば、そこに、商社が存在する意味があるのです。
商社が抱える4つのリスク
商社は、楽して、手数料を稼いでいるのかというと、そうではないのです。
一般的には、リスクに見合った管理費を頂いているのです。では、どんなリスクがあるのでしょうか。
1)売上未回収(最悪)
繰り返しますが、メーカーからすると、客は「商社」なのです。商社は別に、その商品を自分達で使うわけではなく、販売目的で仕入れるのです。
なので、メーカーから納入された時点で、メーカーに対しては支払い義務が生じます。メーカーからすると、お客の商社に納入した時点で、仕事は完了しているのです(手離れするという)その先のこと(量販店)など、知ったことないのです。
万が一、これが量販店に売れなければ、大赤字となります。売上未回収となると最悪です。
「在庫を持たない」というビジネスモデルでなくなってしまいます。
量販店からの正式発注書を待って、メーカーに発注するのが鉄則です。この順番を守れない人は絶対失敗します。
それだけではありません。
量販店が突如倒産してしまうと、売り先がなくなります。必ず、与信調査(相手の会社が、信用出来るのか)をします。相手の会社がやばそうだとなれば、支払い条件を変えて、前金にします。お金を先にもらわないと、扇風機を渡しませんよってことです。
2)為替変動
通貨の問題があります。
メーカーへは「円」を支払いますが、量販店からは「ドル」が入ってきます。円⇄ドルの交換を、商社内で行わないとなりません。海外商社だと、会社の口座には、各国の通貨を持っています。
もし、急な円高で、仕入れがあがると、ドル売りで赤字が発生します(仕入が売上をオーバーする現象です)よって、大きな金額を動かす時は、銀行に、為替予約をかけて、為替リスクをヘッジしたりします。
為替予約とは、何ヶ月後に、通貨を円→ドルに両替する権利を、今買うことです。
3)輸送時の破損
日本の配送業社ならまだしも、海外輸送だと、現地の配送業者がどんな貨物の扱いをするか分かりません。ここも破損した時の輸送保険(一般的に出荷額の0.5%)をかけたり、梱包方法を、指示したりして、リスク軽減します。
4)後出しクレーム
「頼んだモノと違う」なども最悪です。
事前に何度も、お客の「欲しいモノ」と、仕入先の「手配したモノ」が、イコールなのか確認します。これがシャンプーなど日用品ならまだしも、何億円もする設備となると、作り手と、使用者との認識エラーで、板挟みになります。
よって、分厚い設備仕様書などを読み込んで、ミスマッチを防ぐ必要があります。
部下に伝える「抑えるべき3点」
商社は在庫を持たない最強ビジネスモデルなのですが、その分、様々な落とし穴があり、それを1つ1つ埋めていく地味な作業なのです。
僕は、部下にはいつも同じことを言ってます。
仕様 → 想像してたのと違う問題。
お金 → 予算がない。資金未回収。支払い条件問題等
納期 → 欲しいタイミングでモノが入らない
以上、商社のビジネスモデルについて、一気に、書きあげました。自分が書いてて思ったのは、「支払条件」「為替予約」「在庫管理」「信用取引」など、まだまだ語れる、商社ネタはありそうですね。
この世界に12年もいるのですから、語れて当たり前ですか。もっと、こんなこと知りたいなどありましたら、コメント頂ければ嬉しいです。
See you tomorrow.
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